自賠責保険で過失相殺が適用されるのは、被害者に重大な落ち度(過失)がある場合のみですが、重過失と認定される事故は次のとおりです。
なお、適用される相殺率は過失の程度に応じて一定で、その中間率は認めていません。
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例えば、交通事故直後、被害者は軽傷でしたが、数ヵ月後、脳溢血(のういっけつ)で死亡したような場合がまさに因果関係が明確でない事故といえます。
不法行為をした加害者が損害賠償責任を負うのは、加害行為と被害発生の間に因果関係がある場合です。それも、直接その原因から生じてくる結果についてであって、これを相当因果関係といいます。この因果関係は非常に判定が難しいのですが、裁判になって加害者が賠償責任を免れた例は稀です。前述のようなケースの場合も、一見無関係のようですが、裁判に持ち込まれた場合、因果関係ありとして損害賠償責任を負わされる可能性は大きいと思われます。
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ご質問のようなケースを共同不法行為による事故といいますが、被害者は、1台分の自賠責保険だけで足りない場合(総損害額が支払保険金限度額内であれば、いずれか1台に請求すればよいことになります)、もう1台の車にかかっている自賠責保険に損害賠償を請求することができます。
例:傷害事故の場合
この場合、最初に請求した自賠責保険会社に請求書類(立証書類)を出しているので、次の保険会社には請求書と交通事故証明書のコピー、共同不法行為による請求である旨の説明書のみで構いません。
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政府の自動車損害賠償保障事業(略して政府保障事業)というものがあります。自賠責保険では救済されない交通事故で負傷したり、死亡した被害者について、その救済をはかるために政府(国土交通省)が自賠責保険の範囲で、加害者にかわって損害をてん補(立替え)する制度です。このように政府の補償の上限は自賠責保険の最高限度額と同じですので、この金額を超える損害はやはり被害者が加害者に請求することになります。もちろん、政府は加害者が分かれば肩代わりした金額を取り立てます。
政府保障事業は救済方法のない被害者を救うためのものなので、被害者が健康保険または、労災保険その他により給付を受けられる場合には、優先的にそれらから給付を受けなければならず、それでも不足額があるときのみ、この政府保障事業によるてん補を請求することができます。
被害者が、政府保障事業の適用を受けることのできるのは、次の三つの事由のあるときで、自賠責保険の請求のできない場合です。
このような悪質なドライバーが絡んだ最悪の交通事故を想定し、無保険車傷害保険などに加入するなど備えを万全にしておくことも必要です。政府保障事業への請求の窓口は、どこの損害保険会社(外国保険会社等一部を除く)でも構いませんが、お金が支払われるのに1年以上という気の遠くなるような時間がかかる場合が少なくありません。また、治療途中の請求はできませんので注意してください。
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例えば、被害者の損害が治療費、慰謝料等で400万円かかったとしますと、本来であれば、自賠責保険から120万円、任意保険からは280万円が支払われ、加害者は自腹を切らなくて済みます。自賠責保険がない以上、120万円のみ加害者が自己負担するということになります。
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被害者、加害者が共に死亡しても、それで損害賠償責任がない(免責)ということにはなりません。なぜなら加害者の相続人は損害賠償責任を、被害者の相続人は損害賠償請求権をそれぞれ相続するからです。
加害者が任意保険に未加入のときは、加害者が加入していた自賠責保険会社へ被害者請求をしますが、これでも足りないときは、被害者の相続人は、加害者の第1順位の相続人を探して損害賠償請求をすることになります。その際、相続人であることを証明するために、戸籍謄本などが必要になります。しかし、相続は放棄や限定承認(負債を整理して余りが出たら相続)ができますので、加害者の相続人にこれをされると、損害賠償をしてもらえない場合もあります。
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所有者が自動車を降りるときに、キーを抜くなど管理に過失がなかったにもかかわらず、盗まれて交通事故を起こした場合、盗難車の所有者は損害賠償責任を負うことはないと考えられます。
キーを付けたまま自動車を放置するなど所有者に管理上の過失があり、盗難と交通事故の間との時間が密接している場合は、運行供用者として所有者の責任が問われる傾向にあります。運行供用者にあたるかどうかは、個別の事例につき裁判例を参考にします。
具体的な裁判例では・・
などの点から判断しています。
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自動車が盗まれた場合、自動車税の課税保留と還付請求をすることができます。
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この場合、自動車はもとの所有者に返さなくてはなりません。逆に、もとの所有者は購入者から自動車を買い戻す必要はありません。購入者は、お金を支払っていますので、個人売買の場合はその相手方に、中古車販売業者のときはその業者に購入金額の返還請求をすることになります。
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車両保険に加入していて、すでに保険金がでていれば、もとの所有者は関係ありません(所有権は保険会社に移っているため)が、車両保険を掛けていなかった場合は、輸送会社を手配して日本に戻すか、現地で売却することになります。ただ、高額な運搬費用や現地での保管料などをすべて個人負担しなければならないので、現地で売却処分するケースが多いようです。
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保険金支払いの対象になっていれば請求できます。入院や通院が必要な怪我をしたら、必ず全ての証券をチェックしてください。
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誤解があるといけないので、念のためご説明しますが、温泉療養というのは、温泉旅館に泊まってリラックスすることではありません。温泉を利用した医療機関(病院)に入院し、治療を受けるということを意味します。医師の指示がある場合に損害と認められます。なお、鍼灸(しんきゅう)、マッサージ費用、治療器具、薬品代等は医師の指示がある場合、治療に有効であり、かつ必要性があるとなれば損害と認められます。できればマッサージの必要ありという医師の診断書を取っておきましょう。
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賃金センサスとは、厚生労働省が毎年8月頃に発行する平均給与の総計表のことです。適用される賃金センサスは、事故年度にとらわれず最新年度のものでも構いませんが、算定時にすでに経過している期間については、それぞれ当該年度のものを用いることになります。さらに賃金センサスの刊行は年度的にズレますので、その間にベースアップが生じていれば、最新の賃金センサスにベースアップ分を加算してもOKです。
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交通事故被害者の方が、治療費、慰謝料などの損害賠償金を受け取ったときの所得税の課税は次のようになります。
交通事故による治療費や慰謝料、そして負傷して働けないことによる収益の補償をする損害賠償金などは非課税です。ただし、治療費として受け取った金額は、医療費を補てんする金額になります。したがって、医療費控除を受ける場合は、支払った医療費の金額から差し引くことになります。しかし、その医療費を補てんし、なお余りがあっても他の医療費から差し引く必要はありません。
なお、損害賠償金の対象が車両等の事業用資産の場合は、資産損失の金額から損害賠償金を差し引いて計算します。商品が破損し、損害賠償金を受け取った場合は、非課税とはならず事業所得の収入金額となります。
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後遺障害の等級認定は非常に厳しく、非該当すなわち後遺障害ではないと判定されたり、認定されたとしても被害者が望んでいた等級よりも低い等級で認定されることがあります。その理由は、この症状なら後遺障害等級が何級になり、被害者にいくら支払われるかといったことまで正確に理解している医師が書いているものではないからです。そして恐ろしいことに、ほとんどこの書類だけで認定作業が行われています(労災保険は顧問の医師が診断の上、後遺障害等級を認定します)。
被害者が認定等級に対して納得ができなければ、異議申立書を保険会社に提出することができますが、現実には一度認定されたものについて、覆すということはかなりの時間と困難をともないます。このように従来は、あきらめムードが非常に高かったのですが、平成14年4月~紛争処理制度の創設(東京・大阪)がなされました。このような制度をフルに活用し、被害者は正当な権利を主張していくことが大切です。
損害保険料率算出機構(旧自算会)以外の第三者で構成される最終的な審査機関
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ものすごい危険にあった人がフラッシュバック、過度な警戒心などの心理的覚醒状態に加え、不安、自殺願望等の重い症状が生じることをPTSD(心的外傷後ストレス傷害)といいます。従来の裁判では、PTSDに関して交通事故との因果関係を認めていませんでしたが、平成10年の横浜地裁や平成11年の大阪地裁でPTSDを認める判決がでています。PTSDについては、損害保険会社はまず認めませんので、裁判で請求するしかありません。
娘の交通死、見なくても認定 大阪高裁判決
奈良県生駒市で女性(当時24歳)がバイクにはねられ死亡した交通事故を巡る損害賠償訴訟で、大阪高裁が、女性の母親の呼吸困難などの症状を娘の死によるPTSDと認め、PTSD分の慰謝料を200万円と認定していたことが分かった。交通事故の損害賠償訴訟では、目前で子どもを失った親のPTSDを認めた例は稀にあるが、交通事故を目撃していない親について認めた判決は極めて異例。
PTSDであるか否かを認定するには、WHO基準であるICD-10基準や米国精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアルⅣ(DSM-Ⅳ)の基準をもとに判定することになります。
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そもそも鞭打ち症の場合、後遺障害が認定されることは稀です。仮に後遺障害と認定されても、損害保険会社は一般的に鞭打ち症は一種の神経症として、数年内には治るものとみなして労働能力喪失期間(後遺障害が残ったため、労働能力の喪失または低下が継続する期間)を認めたがりません。
鞭打ち症の労働能力喪失率と、喪失期間については争いがありますが、裁判所は鞭打ち症についても定型化を図っています。まずは医師に詳細な後遺障害診断書を作ってもらい、後遺障害を認定してもらうことが先決です。
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この慰謝料の算定方法は、―般的なものなので、実務上では各後遺障害の内容、程度を考慮して、個別に算定します。
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自動車が交通事故にあう直前の価格のことです。車種、年式、型式、使用状態、走行距離など同じ自動車を中古車市場で「買うときの価格」が時価で、売るときの価格ではありません。
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積荷が壊れたときの損害額は、原則として品物の時価です。この時価とは、販売価格と卸売価格の2通りですが、再調達費用すなわち新しく商品を買うのに要する費用です。卸売価格の場合は、かかった運搬費や包装費も時価に含まれます。ただし、積荷を売ったときの利益までは賠償の対象になりません。また、壊れた積荷の一部に使える部分がある場合には、その部分に相当する金額が賠償額から差し引かれます。
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損害賠償金は示談成立と同時に全額受け取れれば、それに越したことはないのですが、後日払や分割払になることだってありえます。そんな時のために、次のような方法があります。
以下の方法で裁判をしなくても、強制執行ができるようにしておきます。
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被害者は、示談成立後の予想外の後遺障害については、示談が既に成立していても、交通事故と予想外の後遺障害との間に相当な因果関係があることを証明できれば、損害賠償請求をすることができます。つまり、医師が後遺障害は交通事故が原因だと診断すれば請求できることになります。
よく示談条項の一つとして「将来、本件事故に起因する新たな後遺障害が発生したときには、甲と乙とは、その損害につき別途、改めて協議する」というような文言(権利留保条項)を一条書き加えることがありますが、法的には必ずしも必要なこととはいえませんが、念のため最後に明記されることをおすすめします。
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示談交渉をいつから始めるかについては、法律上何ら規定されていませんが、交通事故の形態によって通常、以下のような時期に開始します。
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保険会社は医療情報の照会につき、被害者から同意書を取ることで、被害者に代わって医療機関から診断書や診療報酬明細書を取得しています。この医療情報を基に治癒、あるいは症状固定と判断したときに治療費の打ち切りを通告してきます。
被害者は、怪我の治療が最優先ですから、主治医とよく相談し、治療の効果が出ているときは治療を継続することが肝要です。治療費の支払いが無くなるからと言って、治療を止めれば保険会社は当然に治癒、あるいは症状固定と判断します。
治療費の打ち切り後は、取り敢えず治療費を自己負担し、支払った治療費は、治療の効果が出ていることが証明できれば、示談交渉において精算されます。
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交通事故証明書は、稀に誤った記載がなされる場合があります。交通事故証明書を入手したら、間違いがないかよく確認する必要があります。万一、誤った記載があった場合は、最初に交通事故を取り扱った警察署交通事故係へ内容が間違っている旨を申し出て下さい。警察署で確認を受けた後、交通事故証明書を発行した自動車安全運転センターへ原本の証明書を持参、または郵送し訂正を受けて下さい。
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煽った後続車にも被害者との関係で、先行車と同様に責任が生じる可能性があります。交通事情により、一時的に車間距離が詰まった場合を除き、相当程度、継続して煽ることで先行車に心理的な圧力をかけ、速度を上げない場合は追突するような危険を感じさせる悪質な行為であれば、速度超過や車間距離不保持が適用され、後続車に責任の程度に応じて損害賠償請求をすることができます。
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追突され自動車が押し出された結果、歩行者をはねた場合、これを回避する余地がないときは、責任は負わなくてよいと考えられます。ただし、停止線を越えて停止していた場合や軽微な追突であるにもかかわらず、歩行者と接触した場合は、追突された自動車の運転者のブレーキ操作があまかったとして、責任を負う可能性はあります。
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雪道や道路が凍結している場合は、通常より車間距離をとり、徐行運転することが求められます。先行車が急停止した場合でも、追突を回避できるための距離、速度を保持する必要があり、追突事故の主な原因は、後続車にあるとされます。ただし、先行車が雪道を走行するにあたり、速度超過、ブレーキ・ハンドル操作を誤った等がスリップの原因であれば、先行車にも30%程度の責任があると考えられます。
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一度目の追突事故で自動車が物理的に修理が不可能な場合、修理費が自動車の経済価値を超える場合は全損とされ、後続車の追突については、既に価値のない自動車への追突となり、損害賠償請求はできないと思われます。
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「他車運転特約」が自動付帯されている場合、他人の自動車を運転中に交通事故を起こしても、自分の自動車にかけている「対人賠償保険」「対物賠償保険」「人身傷害保険」などが使えます。ただし、友人の承諾なしに無断で自動車を使用している場合は支払われません。
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任意保険会社の示談代行サービスは、あくまで加害者の立場になったときのもので、被害者に過失が全くない「もらい事故」のときは、自分が契約している任意保険会社の示談代行サービスは利用できません。このような場合に備えて、「弁護士費用等補償特約」などがあります。
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