任意保険の基礎知識

任意保険とは

任意保険は、自賠責保険で補償されない物損事故、また自賠責保険金額を超える損害賠償部分を補ってもらうため、個人の意思で加入する保険です。任意保険でも補いきれない部分は加害者本人の負担となります。

交通事故を起こしたら、任意保険に加入している場合は、60日以内に任意保険会社に通知をします。示談代行サービスは、任意保険のうち、自家用自動車総合保険(対人事故および対物事故)、自動車総合保険(対人事故に限る)の加入者に対して適用されるもので、交通事故を起こした加害者や運行供用者に代わって、任意保険会社が被害者と示談交渉をしてくれます。これら以外の場合は、加害者は自分で被害者と示談交渉しなければなりません。

余談ですが、タクシーや運送業のトラックは任意保険に入っていない自動車が多いようです。その理由は、保険料が高いからで、任意保険を掛け捨てるより、その分を自社で蓄えておき、いざというときはそこから損害賠償金を出したほうが断然安上がりと考えているからです。

任意保険で請求できる損害の範囲

(あくまで参考程度のもの)

現在、任意保険の支払基準については、各任意保険会社に独自の支払基準があって、統一的な任意保険支払基準はありません。各任意保険会社の支払基準は、あくまで内部的な基準ですので、被害者は、それに拘束されるものではありません。ここにある任意保険支払基準はおおよそのものです。ご参考にされるときは、その点に十分ご留意ください。

死亡事故

支払可能損害 内容 支払基準
葬儀費 通夜、祭壇、火葬、埋葬、墓石などに要する費用
墓地、永代供養、年忌供養、香典返しなどは含まれません。
60万円~100万円
逸失利益 被害者が死亡しなければ将来得ることができたと考えられる収入額から本人の生活費を控除したものです。 自賠責保険と計算方法は同じです。
【生活費率】
  • 被扶養者無 50%
  • 被扶養者1人 40%
  • 被扶養者2人 35%
  • 被扶養者3人 30%
慰謝料 被害者本人の慰謝料 一家の支柱
1,500万円~2,000万円
18歳未満(幼児・児童・学生)
1,200万円~1,500万円
高齢者(65歳以上)
1,100万円~1,400万円
上記以外
1,300万円~1,600万円

傷害事故

支払可能損害 内容 支払基準
治療費 診察料・入院料・投薬料・手術料・処置料・通院費・柔道整復等の費用です。 必要かつ妥当な実費
看護料 入院中の看護料(原則として12歳以下の子供に近親者等が付き添った場合)
自宅看護料または通院看護料(医師が看護の必要性を認めた場合または12歳以下の子供の通院等に近親者等が付き添った場合)
入院1日につき4,100円
自宅看護または通院1日につき2,050円
近親者以外の場合、必要かつ妥当な実費
諸雑費 入院中の諸雑費 原則として入院1日につき1,100円
通院交通費 通院に要した交通費 必要かつ妥当な実費
自家用車で通院した場合は、ガソリン代として自宅から病院までの距離、1Kmに対して15円で計算されます。
義肢等の費用 義肢、歯科補てつ、義眼、補聴器、松葉杖等の費用です。 必要かつ妥当な実費
休業損害 事故による傷害のために発生した収入の減少
  • 有職者 現実の収入減とします。
  • 家事従事者 1日につき5,700円
慰謝料 精神的・肉体的な苦痛に対する補償 傷害による慰謝料表を参照。

後遺障害事故

支払可能損害 内容 支払基準
逸失利益 身体に障害を残し労働能力が減少したために将来発生するであろう収入減 自賠責保険と計算方法は同じですが、就労可能年数は被害者の障害により個別に認定します。
慰謝料
左は自賠責保険の基準です。
第1級 1,100万円~1,700万円 第8級 324万円~470万円
第2級 958万円~1,500万円 第9級 245万円~350万円
第3級 829万円~1,300万円 第10級 187万円~260万円
第4級 712万円~1,100万円 第11級 135万円~190万円
第5級 599万円~ 900万円 第12級 93万円~130万円
第6級 498万円~ 750万円 第13級 57万円~ 80万円
第7級 409万円~ 600万円 第14級 32万円~ 45万円
第1級、第2級および第3級の被害者で、父母、配偶者、子のいずれかがいる場合は、下記の通りとします。
  • 第1級 1,300万円~2,000万円
  • 第2級 1,128万円~1,650万円
  • 第3級  973万円~1,400万円
傷害による慰謝料表(隔日通院の場合) (単位:万円)
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
通院 25.2 50.4 75.6 95.8 113.4 128.5 141.1 152.5 162.5
1月 12.6 37.8 63.0 85.7 104.6 121.0 134.8 147.4 157.5 167.5
2月 25.2 50.4 73.1 94.5 112.2 127.3 141.1 152.4 162.5 171.3
3月 37.8 60.5 81.9 102.1 118.5 133.6 146.1 157.4 166.3 173.8
4月 47.9 69.3 89.5 108.4 124.8 138.6 151.1 161.2 168.8 176.4
5月 56.7 76.9 95.8 114.7 129.8 143.6 154.9 163.7 171.4 178.9
6月 64.3 83.2 102.1 119.7 134.8 147.4 157.4 166.3 173.9 181.4
7月 70.6 89.5 107.1 124.7 138.6 149.9 160.0 168.8 176.4 183.9
8月 76.9 94.5 112.1 128.5 141.1 152.5 162.5 171.3 178.9 186.4
9月 81.9 99.5 115.9 131.0 143.7 155.0 165.0 173.8 181.4 188.9
10月 86.9 103.3 118.4 133.6 146.2 157.5 167.5 176.3 183.9 191.4
11月 90.7 105.8 121.0 136.1 148.7 160.0 170.0 178.8 186.4 193.9
12月 93.2 108.4 123.5 138.6 151.2 162.5 172.5 181.3 188.9
13月 95.8 110.9 126.0 141.1 153.7 165.0 175.0 183.8
14月 98.3 113.4 128.5 143.6 156.2 167.5 177.5
15月 100.8 115.9 131.0 146.1 158.7 170.0

適用上の注意

傷害の程度による認定
軽傷の場合 支払基準表の金額    ~10%増程度
通常の場合 支払基準表の金額の10%~20%増程度
重傷の場合 支払基準表の金額の25%~70%増程度
軽傷・通常・重傷の区分
軽傷 打撲、挫傷、擦過傷、捻挫(頚椎・腰椎捻挫)など、下記「通常」・「重傷」以外のもの。
通常 骨折(前腕骨折等)、骨折と同程度の傷害(膝関節脱臼等)、入院事案または後遺障害の残存するもののいずれかに該当するもの。
重傷 頭蓋骨骨折、脳挫傷、頭蓋内出血(硬膜外血腫、硬膜下血腫等)、顔面部(眼)の深部損傷(視神経損傷、眼球破裂等)、顔面部(耳、鼻)の髄液漏、頚・胸・腰椎脱臼・骨折、頚髄損傷、上腕神経叢完全損傷(完全麻痺)、臓器損傷・破裂、上肢手関節以上切断、下肢足関節以上切断、熱傷II~III(体表面の30%以上)等

任意保険の種類

任意保険組合せ販売

自家用自動車総合保険
SAP
(スペシャル・オートモービル・ポリシー)
対人・対物事故の示談代行サービス有
契約できる車種は限定されており、自家用自動車5車種(普通乗用車・小型乗用車・軽四輪乗用車・小型貨物車・軽四輪貨物車)
上記の5車種に該当する自動車であれば、家庭用か業務用か、個人所有か法人所有か等は問いません。
対人賠償保険・自損事故保険・無保険車傷害保険・対物賠償保険・搭乗者傷害保険・車両保険の6つがセット
自動車総合保険
PAP
(パッケージ・オートモービル・ポリシー)
対人事故の示談代行サービス有
対物事故の示談代行サービス無
対象となる車種は広く、バイクやトラック、ダンプ、レンタカーも対象になります。
対人賠償保険・自損事故保険・無保険車傷害保険・対物賠償保険・搭乗者傷害保険の5つがセット
希望によって車両保険もつけることができます。
自動車保険
BAP
(ペーシック・オートモービル・ポリシー)
示談代行サービス無
それぞれの保険を自由に組み合せて契約することができます。
対人賠償保険(自損事故保険を自動付帯)・対物賠償保険・車両保険
自動車運転者損害賠償責任保険
(ドライバー保険)
対象となる車種は自家用乗用車、自家用貨物車(小型、軽四輪)、二輪自動車、原動機付自転車
他人の車やバイクを借りたときにだけ、効力を発揮する代物(しろもの)で、ペーパードライバーのための保険です。
対人賠償保険(自損事故保険を自動付帯)・対物賠償保険

SAPとPAPの大きな違いは、無保険車傷害保険のカバーの範囲です。

任意保険組合せ販売の内容

対人賠償保険 交通事故によって、歩行者、同乗者、他の自動車に乗車している人などを傷つけたり、死亡させ、損害賠償責任を負った場合、自賠責保険で支払われる保険金を超える部分について、保険金が支払われます。
対物賠償保険 他人の自動車や建物等を傷つけたことにより、損害賠償責任を負担した場合に、保険金が支払われます。
人身傷害保険 自動車に乗っていた人が死傷した場合、過失割合にかかわらず、治療費、休業補償、慰謝料など、実際に生じた損害額が保険金額の範囲内で支払われます。
歩行中や他車に搭乗中の事故をカバーするタイプもあります。
搭乗者傷害保険 被保険者自動車に搭乗中の者が被るかもしれない損害に備えて締結する保険です。
自損事故保険 自動車の所有者、運転者または乗車中の人が、交通事故によって死亡または負傷し、それによって生じた損害について、自賠責保険または政府保障事業の補償を受けられない場合に、保険金が支払われます。
例:電柱への衝突や崖からの転落により運転者が死亡した場合など
無保険車傷害保険 対人賠償保険に加入していないなど、賠償資力が十分でない自動車に衝突されて、運転者や同乗者が損害を被った場合に、保険金が支払われます。
車両保険 自動車が、衝突、接触、火災、爆発、盗難、台風、洪水、高潮などの偶然な事故によって損害を被った場合に、保険金が支払われます。

ここで、注意しなければならないのは、上記の各保険には免責事由があるということです。これらの免責事由が適用される交通事故の場合、保険金は支払われません。

任意保険の等級

割引率の適用

任意保険は、自賠責保険と異なり、「メリット・デメリット料率」といって、無事故を続ける優良ドライバーには保険料を安く、交通事故を起こして保険を使用したドライバーには保険料を高くするというシステムを採用しています。一般に等級は、1等級(最低)~20等級(最高)まであり、新規加入である1年目は6等級からスタートし、1年間保険を使用しなければ、1等級アップして割引率は上がり、保険を使用すると等級がダウンして割引率は下がります。

平成25年10月からスタートした新制度では、1等級に1つだった割引率が「事故なし」「事故あり」の2種類になり、事故で保険を使用すると従来どおり3等級下がるだけでなく、翌年から3年間は「事故あり」の割引率が適用されるようになりました。

等級の引き継ぎ

転勤などで、自動車を手放すことになった場合、保険解約をする際、13カ月以内に保険会社に申し出て「中断証明書」を取得しておくと、解約後10年間は新たに自動車を購入しても以前の等級を引き継ぐことができます。

セカンドカー割引

1台目の自動車の等級が11等級以上であれば、2台目の等級は7等級からスタートできるメリットがあります。