主任技術者と監理技術者

建設業者は、その施工する工事現場に技術者を配置しなければならないとされています(建設業法第26条)が、その技術者のことを「配置技術者」と呼んでいます。 配置技術者には、「主任技術者」と「監理技術者」があります。

ちなみに「現場代理人」は、契約当事者間の取決めにしたがって置かれる請負人の代理人であって、「配置技術者」とは役割等が異なります。なお、契約当事者間で特に定めがない限り、同一人がこれを兼ねることは差し支えありません。

一般建設業者は監理技術者を配置することはありませんが、特定建設業者は場合により監理技術者を配置しなければなりません。

主任技術者の配置

1件の建設工事につき元請工事で、下請に工事を出す代金の合計額(※)が4,500万円(建築工事業は7,000万円)以上(いずれも消費税及び地方消費税を含む)にならない場合、又は下請工事のみの場合は、主任技術者の配置が必要です。

発注者から直接請け負う1件の建設工事につき、元請負人が4,500万円(建築一式工事にあっては7,000万円)以上の工事を下請施工させようとする時の4,500万円(7,000万円)には、元請負人が提供する材料等の価格は含みません。

主任技術者の職務

主任技術者は、工事現場における建設工事を適正に実施するため、当該建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理及び当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督を職務とする者です。

主任技術者の資格

主任技術者の資格は、一般建設業の専任技術者と同じです。しかし、専任技術者は出向でも認められますが、主任技術者は直接的かつ恒常的な雇用関係にあることが必要ですので、出向は認められません。

監理技術者の配置

発注者から直接請け負った(元請工事)1件の建設工事につき下請に出す代金の合計額(※)が4,500万円(建築工事業は7,000万円)以上(いずれも消費税及び地方消費税を含む)となる場合は、監理技術者の配置が必要となります。

発注者から直接請け負う1件の建設工事につき、元請負人が4,500万円(建築一式工事にあっては7,000万円)以上の工事を下請施工させようとする時の4,500万円(7,000万円)には、元請負人が提供する材料等の価格は含みません。

監理技術者の職務

監理技術者とは、基本的には主任技術者と同様に、工事現場における建設工事を適正に実施するため、当該建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理及び当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督を職務とする者ですが、下請負人を適切に指導、監督するという総合的な役割を担うため、主任技術者に比べ、より厳しい資格や経験が求められます。

監理技術者の資格

監理技術者の資格は、特定建設業の専任技術者と同じです。監理技術者も主任技術者と同様に、直接的かつ恒常的な雇用関係にあることが必要ですので、出向は認められません。

指定建設業「7業種」(土木、建築、電気、管、鋼構造物、舗装、造園)に係る監理技術者は、次のイ、ロ、ハ、ニのいずれかに該当する方に限られます。

監理技術者資格者証と監理技術者講習修了証

監理技術者として建設工事に専任で携わる方は、監理技術者資格者証の交付を受け、かつ、監理技術者講習を修了していることが必要です。(公共工事だけでなく、重要な民間工事に専任で配置される監理技術者の方は監理技術者講習の受講が必要です。)

監理技術者になるには、特定建設業の専任技術者となる資格を有していれば、(一財)建設業技術者センターに監理技術者資格者証の交付申請をして、受付・審査後に監理技術者資格者証が交付されます。

監理技術者資格者証の交付は、監理技術者講習修了の有無にかかわらず可能です。

平成28年6月1日より、監理技術者資格者証の裏面に監理技術者講習修了履歴を貼り付けることにより、監理技術者資格者証と監理技術者講習修了証は1枚に統合されました。

(国土交通省「監理技術者資格者証と講習修了証の統合について」より)

監理技術者資格者証と監理技術者講習修了証の有効期限

監理技術者資格者証の有効期限は交付日から5年間です。監理技術者講習修了証は、工期のどの期間から見ても5年以内に受講したものでなければなりません。

監理技術者資格者証の提示義務

工事現場においては監理技術者証の携帯が義務づけられ、発注者から請求があったときは提示しなければなりません。

専任が求められる工事

主任技術者または監理技術者の現場専任が求められる工事は、「公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事」で工事1件の請負金額が4,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上(いずれも消費税及び地方消費税を含む)のものと定められています。

《建設業法第26条第3項》 「公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事」には、発注者が公的機関ではない、いわゆる民間工事が含まれており、個人住宅を除くほとんどの工事がその対象となっています。

工事現場ごとに専任とは

専任とは、他の工事現場の「主任技術者」又は「監理技術者」及び「営業所の専任技術者」との兼任を認めないことを意味します。

専任技術者と主任技術者・監理技術者

「営業所の専任技術者」は、専任を要する現場の主任技術者または監理技術者になることができないことに注意してください。専任技術者は営業所を専任しています。専任を要する現場の主任技術者・監理技術者は工事現場を専任しています。兼任ということになれば、そもそも専任していないことになり、矛盾が生じます。

「営業所の専任技術者」は、請負契約の締結にあたり技術的なサポート(工法の検討、注文者への技術的な説明、見積等)を行うことがその職務ですから、所属営業所に常勤していることが原則です。

しかし、一人親方で建設業を営んでいる場合は、兼任せざるを得ません。

そこで、例外的に所属営業所の近隣工事の主任技術者等との兼務が職務を適正に遂行できる範囲で可能な場合には、現場の技術者となることもできるとしています。具体的には次のとおりで、全ての要件を満たす必要があります。

例外的に専任技術者の兼務が可能となるための要件

  1. 該当技術者が所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること
  2. 「公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事」で工事1件の請負金額が4,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上(いずれも消費税及び地方消費税を含む)の工事でないこと
  3. 所属する営業所で契約締結した工事であること
  4. 所属する営業所での職務が適正に遂行できる程度に近接した工事現場であること
  5. 所属する営業所と常時連絡が取れる状態であること

近隣工事であっても工事現場への専任を要する工事の主任技術者等と兼務することはできません。

特例監理技術者は2現場の兼務が可能

監理技術者の職務を補佐する者を工事現場に専任で配置した場合は、特例監理技術者は2現場の兼務が可能となります。ただし、特例監理技術者は兼務可能ですが、監理技術者は建設工事を適正に実施するため、当該建設工事の施工計画の作成、工程管理・品質管理その他の技術管理といった業務を引き続き担っています。

主任技術者の配置が不要な特定専門工事

一次下請業者と二次下請業者は、合意により一次下請業者が配置する主任技術者が、その行うべき技術上の施工管理と併せて、本来であれば二次下請業者の主任技術者が行うべき技術上の施工管理を行うときは、 二次下請業者は主任技術者の配置を要しないとされています。具体的には次のとおりで、全ての要件を満たす必要があります。

主任技術者の配置が不要となるための要件

  1. 適用対象は下請代金の額が4,000万円未満の特定専門工事(鉄筋工事・型枠工事)に限定
  2. 一次下請業者の主任技術者は、当該特定専門工事と同一の種類の建設工事に関し一年以上の指導監督的な実務の経験を有し、かつ、当該工事現場に専任で置かれる者
  3. 一次下請業者と二次下請業者との書面による合意が必要
  4. 主任技術者を置かないこととした二次下請業者は、その下請負に係る建設工事を他人に請け負わせることは禁止

建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準

主任技術者等の不設置等

建設業法第26条の規定に違反して主任技術者又は監理技術者を置かなかったとき(資格要件を満たさない者を置いたときを含む。)は、15日以上の営業停止処分を行うこととする。ただし、工事現場に置かれた主任技術者又は監理技術者が、同条第3項に規定する専任義務に違反する場合には、指示処分を行うこととする。指示処分に従わない場合は、機動的に営業停止処分を行うこととする。この場合において、営業停止の期間は、7日以上とする。

また、主任技術者又は監理技術者が工事の施工の管理について著しく不適当であり、かつ、その変更が公益上必要であると認められるときは、直ちに当該技術者の変更の勧告を書面で行うこととし、必要に応じ、指示処分を行うこととする。指示処分に従わない場合は、機動的に営業停止処分を行うこととする。この場合において、営業停止の期間は、7日以上とする。

建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準の一部改正について(国土建第214号)より抜粋