建設業の許可を取得する場合、比較的小規模な会社等では、経営業務管理責任者や専任技術者の要件から、希望する業種すべての許可を取得することは容易ではありません。このような場合、許可要件に適合した請負金額のウエイトが一番大きい業種の許可を最優先に取得し、その他の工事は付随工事(建築一式工事以外の建設工事の場合、1件の請負代金が500万円(消費税及び地方消費税を含む)未満の工事に限られます。)として請負います。
建設工事の種類につき、実際に建設業者の方でも業種によっては、かなり誤解されているケースが見受けられます。もちろん、我々行政書士や県の担当者であっても、工事内容によってはどの業種に該当するのか判断に迷うことがあります。思い込みによって、本来取得すべき業種の許可ではなく、付随する工事の許可を取得してからでは手遅れです。建設工事の種類・業種の選定は、一見簡単に思えますが、実はかなり奥が深いのです。
建設工事の種類 (略号) |
業種 | 建設工事の内容 | 建設工事の例示 |
---|---|---|---|
土木一式工事 (土) |
士木工事業 | 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。以下同じ) | 許可業種区分の考え方について |
建築一式工事 (建) |
建築工事業 | 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事 | 許可業種区分の考え方について |
大工工事 (大) |
大工工事業 | 木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事 | 大工工事、型枠工事、造作工事 |
左官工事 (左) |
左官工事業 | 工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又ははり付ける工事 | 左官工事、モルタルエ事、モルタル防水工事、吹付け工事、とぎ出し工事、洗い出し工事 |
とび・土工・コンクリート工事 (と) |
とび・土工工事業 |
|
|
石工事 (石) |
石工事業 | 石材(石材に類似のコンクリートブロック及び擬石を含む。)の加工又は積方により工作物を築造し、又は工作物に石材を取付ける工事 | 石積み(張り)工事、コンクリートブロック積み(張り)工事 |
屋根工事 (屋) |
屋根工事業 | 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事 | 屋根ふき工事 |
電気工事 (電) |
電気工事業 | 発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事 | 発電設備工事、送配電線工事、引込線工事、変電設備工事、構内電気設備(非常用電気設備を含む。)工事、照明設備工事、電車線工事、信号設備工事、ネオン装置工事 |
管工事 (管) |
管工事業 | 冷暖房、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事 | 冷暖房設備工事、冷凍冷蔵設備工事、空気調和設備工事、給排水・給湯設備工事、厨房設備工事、衛生設備工事、浄化槽工事、水洗便所設備工事、ガス管配管工事、ダクトエ事、管内更生工事 |
タイル・れんが・ブロック工事 (タ) |
タイル・れんが・ブロック工事業 | れんが、コンクリートブロック等により工作物を築造し、又は工作物にれんが、コンクリートブロック、タイル等を取付け、又ははり付ける工事 | コンクリートブロック積み(張り)工事、れんが積み(張り)工事、タイル張り工事、築炉工事、スレート張り工事 |
鋼構造物工事 (鋼) |
鋼構造物工事業 | 形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事 | 鉄骨工事、橋梁工事、鉄塔工事、石油、ガス等の貯蔵用タンク設置工事、屋外広告工事、閘門、水門等の門扉設置工事 |
鉄筋工事 (筋) |
鉄筋工事業 | 棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組立てる工事 | 鉄筋加工組立て工事、ガス圧接工事 |
舗装工事 (舗) |
舗装工事業 | 道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等によりほ装する工事 | アスファルト舗装工事、コンクリート舗装工事、ブロック舗装工事、路盤築造工事 |
しゅんせつ工事 (しゅ) |
しゅんせつ工事業 | 河川、港湾等の水底をしゅんせつする工事 | しゅんせつ工事 |
板金工事 (板) |
板金工事業 | 金属薄板等を加工して工作物に取付け、又は工作物に金属製等の付属物を取付ける工事 | 板金加工取付け工事、建築板金工事 |
ガラス工事 (ガ) |
ガラス工事業 | 工作物にガラスを加工して工作物に取付ける工事 | ガラス加工取付け工事 |
塗装工事 (塗) |
塗装工事業 | 塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事 | 塗装工事、溶射工事、ライニングエ事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面表示工事 |
防水工事 (防) |
防水工事業 | アスファルト、モルタル、シーリング材等によって防水を行う工事 | アスファルト防水工事、モルタル防水工事、シーリングエ事、塗膜防水工事、シート防水工事、注入防水工事 |
内装仕上工事 (内) |
内装仕上工事業 | 木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、力一ペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事 | インテリアエ事、天丼仕上工事、壁張り工事、内装間仕切り工事、床仕上工事、たたみ工事、ふすま工事、家具工事、防音工事 |
機械器具設置工事 (機) |
機械器具設置工事業 | 機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取り付ける工事 | プラント設備工事、運搬機器設置工事、内燃力発電設備工事、集塵機器設置工事、給排気機器設置工事、ダム用仮設備工事、遊技施設設置工事、舞台装置設置工事、サイロ設置工事、立体駐車場設備工事 |
熱絶縁工事 (絶) |
熱絶縁工事業 | 工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事 | 冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備又は燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事 |
電気通信工事 (通) |
電気通信工事業 | 有線電気通信設備、無線電気通信設備、放送機械設備、データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事 | 電気通信線路設備工事、電気通信機械設置工事、放送機械設置工事、空中線設備工事、データ通信設備工事、情報制御設備工事、TV電波障害防除設備工事 |
造園工事 (園) |
造園工事業 | 整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造し、道路、建築物の屋上等を緑化し、又は植生を復元する工事 | 植栽工事、地被工事、景石工事、地ごしらえ工事、公園設備工事、広場工事、園路工事、水景工事、屋上等緑化工事 |
さく井工事 (井) |
さく井工事業 | さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事又はこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事 | さく井工事、観測井工事、還元井工事、温泉掘削工事、井戸築造工事、さく孔工事、石油掘削工事、天然ガス掘削工事、揚水設備工事 |
建具工事 (具) |
建具工事業 | 工作物に木製又は金属製の建具等を取付ける工事 | 金属製建具取付け工事、サッシ取付け工事、金属製カーテンウォール取付け工事、シャッター取付け工事、自動ドア取付け工事、木製建具取付け工事、ふすま工事 |
水道施設工事 (水) |
水道施設工事業 | 上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事又は公共下水道若しくは流域下水道の処理設備を設置する工事 | 取水施設工事、浄水施設工事、配水施設工事、下水処理設備工事 |
消防施設工事 (消) |
消防施設工事業 | 火災警報設備、消火設備、避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置し、又は工作物に取付ける工事 | 屋内消火栓設置工事、スプリンクラー設置工事、水噴霧、泡、不燃性ガス、蒸発性液体又は粉末による消火設備工事、屋外消火栓設置工事、動力消防ポンプ設置工事、火災報知設備工事、漏電火災警報器設置工事、非常警報設備工事、金属製避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋又は排煙設備の設置工事 |
清掃施設工事 (清) |
清掃施設工事業 | し尿処理施設又はごみ処理施設を設置する工事 | ごみ処理施設工事、し尿処理施設工事 |
解体工事 (解) |
解体工事業 | 工作物の解体を行う工事 | 工作物解体工事 |
各業種における類似した建設工事の区分の考え方等については、次のとおりです。
橋梁工事、ダムエ事、トンネル工事、空港工事、高速道路工事、鉄道軌道工事、公道下の下水道工事、農業用水道、かんがい用排水施設工事等を一式として請負う工事です。そのうちの一部のみ請負った工事は、それぞれの該当する専門工事になります。
一棟の住宅建設等を一式として請負う工事です。建築確認を必要とする増改築等の工事も該当します。例えば、木造住宅の新築工事では、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリートエ事、屋根工事、内装仕上工事、電気工事、管工事、建具工事等、様々な専門工事が合わさって完成します。これらの専門工事業者を取りまとめ、注文者と契約を締結する場合、建築一式工事の許可が必要です。
建築一式工事の許可があれば、どんな専門工事でもできる訳ではなく、あくまで建築一式を請負うための許可ですので、小規模なリフォーム工事で内装仕上工事のみの専門工事を個別に請負うことはできません。(1件の請負代金が500万円(消費税及び地方消費税を含む)未満の工事を除く)
型枠工事は、コンクリートなどを流し込むための型枠を設置する工事ですが、型枠が木製の場合は、『大工工事』に該当します。大工工事は、原則として木製工事ですので、型枠が鋼製の場合は、『鋼構造物工事』に該当する場合もあります。
コンクリートを流し込む工事や型枠を解体する工事は『とび・土工・コンクリート工事』に該当します。型枠工事=必ずしも大工工事ではないケースもあり、様々な業種が関連する可能性が高いので注意が必要です。
防水モルタルを用いた防水工事は、左官工事業、防水工事業どちらの業種の許可でも施工可能です。「ラス張り工事」及び「乾式壁工事」については、通常、左官工事を行う際の準備作業として当然に含まれています。
『とび・土工・コンクリート工事』における「コンクリートブロック据付け工事」並びに『石工事』及び『タイル・れんが・ブロック工事』における「コンクリートブロック積み(張り)工事」間の区分の考え方
『とび・土工・コンクリート工事』における「鉄骨組立工事」と『鋼構造物工事』における「鉄骨工事」との区分の考え方
「プレストレストコンクリート工事」のうち橋梁等の土木工作物を総合的に建設するプレストレストコンクリート構造物工事は『土木一式工事』に該当します。
「地盤改良工事」とは、薬液注入工事、ウエルポイント工事等各種の地盤の改良を行う工事を総称したものです。
「吹付け工事」とは、「モルタル吹付け工事」及び「種子吹付け工事」を総称したものであり、法面処理等のためにモルタル又は種子を吹付ける工事をいい、建築物に対するモルタル等の吹付けは『左官工事』における「吹付け工事」に該当します。
「法面保護工事」とは、法枠の設置等により法面の崩壊を防止する工事をいいます。
「道路付属物設置工事」には、道路標識やガードレールの設置工事が含まれます。
『とび・土工・コンクリート工事』における「屋外広告物設置工事」と『鋼構造物工事』における「屋外広告工事」との区分の考え方
トンネル防水工事等の土木系の防水工事は『防水工事』ではなく『とび・土工・コンクリート工事』に該当し、いわゆる建築系の防水工事は『防水工事』に該当します。
機械器具・建設資材等の重量物の運搬設置工事は、既製の機械等を現場に設置する工事は『とび・土工・コンクリート工事』に該当します。現場で機械等を組立て設置する工事は『機械器具設置工事』や『鋼構造物工事』に該当します。「ポンプ設置工事」や「水耕プラント設置工事」も、既製のものを現場に設置する工事は『とび・土工・コンクリート工事』に該当します。
「瓦」、「スレート」及び「金属薄板」については、屋根をふく材料の別を示したものにすぎず、また、これら以外の材料による屋根ふき工事も多いことから、これらを包括して「屋根ふき工事」としています。したがって「板金屋根工事」も「板金工事」ではなく『屋根工事』に該当します。
「屋根断熱工事」は、断熱処理を施した材料により屋根をふく工事であり「屋根ふき工事」の一類型です。
屋根一体型の太陽光パネル設置工事は『屋根工事』に該当します。太陽光発電設備の設置工事は『電気工事』に該当し、太陽光パネルを屋根に設置する場合は、屋根等の止水処理を行う工事が含まれます。
計装工事における『電気工事』、『電気通信工事』及び『管工事』間の区分の考え方
し尿処理に関する施設の建設工事における『管工事』、『水道施設工事』及び『清掃施設工事』間の区分の考え方
「スレート張り工事」とは、スレートを外壁等にはる工事を内容としており、スレートにより屋根をふく工事は「屋根ふき工事」として『屋根工事』に該当します。
「コンクリートブロック」には、プレキャストコンクリートパネル及びオートクレイブ養生をした軽量気ほうコンクリートパネルも含まれます。
『鋼構造物工事』における「鉄骨工事」と『とび・土工・コンクリート工事』における「鉄骨組立工事」との区分の考え方
舗装工事と併せて施工されることが多いガードレール設置工事については、工事の種類としては『舗装工事』ではなく『とび・土工・コンクリート工事』に該当します。
人工芝張付け工事については、地盤面をコンクリート等で舗装した上にはり付けるものは『舗装工事』に該当します。
「建築板金工事」とは、建築物の内外装として板金をはり付ける工事をいい、具体的には建築物の外壁へのカラー鉄板張付け工事や厨房の天井へのステンレス板張付け工事等です。
「下地調整工事」及び「ブラスト工事」については、通常、塗装工事を行う際の準備作業として当然に含まれています。
『防水工事』に含まれるものは、いわゆる建築系の防水工事のみであり、トンネル防水工事等の土木系の防水工事は『防水工事』ではなく『とび・土工・コンクリート工事』に該当します。
「家具工事」とは、建築物に家具を据付け又は家具の材料を現場にて加工若しくは組み立てて据付ける工事をいいます。
「防音工事」とは、建築物における通常の防音工事であり、ホール等の構造的に音響効果を目的とするような工事は含まれません。
木造住宅の新築工事で、柱や梁の工事は『大工工事』に該当します。
『機械器具設置工事』には、広くすべての機械器具類の設置に関する工事が含まれるため、機械器具の種類によっては、『電気工事』、『管工事』、『電気通信工事』、『水道施設工事』、『消防施設工事』等と重複するものもありますが、これらについては原則として『電気工事』等それぞれの専門の工事の方に区分するものとし、これらいずれにも該当しない機械器具あるいは複合的な機械器具の設置が『機械器具設置工事』に該当します。
「運搬機器設置工事」には、「昇降機設置工事」も含まれます。
「給排気機器設置工事」とは、トンネル、地下道等の給排気用に設置される機械器具に関する工事であり、建築物の中に設置される通常の空調機器の設置工事は、『機械器具設置工事』ではなく『管工事』に該当します。
「情報制御設備工事」には、コンピューター等の情報処理設備の設置工事も含まれます。
既に設置された電気通信設備の改修・修繕、又は補修は、『電気通信工事』に該当する。なお、保守(電気通信施設の機能性能及び耐久性の確保を図るために実施する点検、整備及び修理をいう。)に関する役務の提供等の業務は、『電気通信工事』に該当しません。
上下水道に関する施設の建設工事における『水道施設工事』、『管工事』及び『土木一式工事』間の区分の考え方
なお、農業用水道、かんがい用排水施設等の建設工事は『水道施設工事』ではなく『土木一式工事』に該当します。
「金属製避難はしご」とは、火災時等にのみ使用する組立式のはしごであり、ビルの外壁に固定された避難階段等はこれに該当しません。したがって、このような固定された避難階段を設置する工事は、『消防施設工事』ではなく、建築物の躯体の一部の工事として『建築一式工事』又は『鋼構造物工事』に該当します。
『機械器具設置工事』には広くすべての機械器具類の設置に関する工事が含まれるため、機械器具の種類によっては『電気工事』、『管工事』、『電気通信工事』、『消防施設工事』等と重複するものもありますが、これらについては原則として『電気工事』等それぞれの専門の工事の方に区分するものとし、これらいずれにも該当しない機械器具あるいは複合的な機械器具の設置が『機械器具設置工事』に該当します。
公害防止施設を単体で設置する工事については、『清掃施設工事』ではなく、それぞれの公害防止施設ごとに、例えば排水処理設備であれば『管工事』、集塵設備であれば『機械器具設置工事』等に区分すべきものです。
し尿処理に関する施設の建設工事における『管工事』、『水道施設工事』及び『清掃施設工事』間の区分の考え方は、規模の大小を問わず浄化槽(合併処理槽を含む。)によりし尿を処理する施設の建設工事が『管工事』に該当し、公共団体が設置するもので下水道により収集された汚水を処理する施設の建設工事が『水道施設工事』に該当し、公共団体が設置するもので汲取方式により収集されたし尿を処理する施設の建設工事が『清掃施設工事』に該当します。
それぞれの専門工事において建設される目的物について、それのみを解体する工事は各専門工事に該当します。総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物や建築物を解体する工事は、それぞれ『土木一式工事』や『建築一式工事』に該当します。