養育費は、子供を養い育てるための費用(子の監護に要する費用)です。離婚をすれば夫婦は他人になりますが、親子関係に変りはありませんので、養育費は親の義務として支払わなければなりません。養育費は慰謝料や財産分与とは違い、子供が親に対して有する権利です。これを親が一方的に放棄をしたとしても無効になります。
平成23年の民法の一部改正で、協議離婚の際に父母が協議で定める事項として、「養育費の分担」と「面会交流」があること、これらの取決めをすることは子の利益を最も優先して考慮しなければならないことが民法に明記されました。
法的な定めはなく、養育費は夫婦がお互いの収入や財産、子供にこれまでかかった費用、これからかかるであろう費用の見通しを考えて決めることになります。調停、審判あるいは裁判で決まった夫から妻へ支払う養育費の月額は、4~6万円が多くなっています。子供1人の場合、月2~6万円以下が多く、2人で4~6万円、3人でも6万円以下となっています。結局、1人でも3人でもあまり大差はないんですね。
ちなみに、厚生労働省の「全国母子世帯等調査」(2011年)によると、養育費の一世帯平均月額は子供の人数に限らず4万3千482円。離婚時に養育費の取決めをした人は37.7%(全国母子世帯等調査(2006年)では38.8%)で、実際に受け取っている世帯は19.7%(全国母子世帯等調査(2006年)では19.0%)とかなり少ないことをデータが示しています。
養育費の状況 (厚生労働省「平成23年度全国母子世帯等調査結果報告」より)
実際に家庭裁判所でとられている算定方法には、次のようなものがあります。
令和元年に東京及び大阪の家庭裁判所所属の裁判官を研究員とする研究報告によって提案されたものです。強制力はありませんが、実務上、全国の裁判所で使い始められています。養育費算定表は、特別に専門知識がなくても使えますので、協議離婚の際、養育費の算定に役立ちます。
養育費算定表は、子供の数・年齢に応じて、以下の9種類に分けられています。
義務者(養育費を支払う親)の年収が縦軸、権利者(子供を養育し、受取る親)の年収が横軸で、それぞれ右と上へ線を延ばし、二本の線が交わるマス目の金額が義務者が負担すべき養育費の額となります。
夫婦双方の収入と支出、生活費によって分担額を決める方式です。以前、家庭裁判所ではこの算定方式が主流でしたが、客観的妥当性に欠け、低額傾向にあるということで、現在では使われていません。
例:
厚生労働省の公表する生活保護法に基づく保護基準(生活扶助・教育扶助・住宅扶助等)を判断の尺度にしたものです。この方式は、物価や生活水準の変動によって毎年更新され、年齢、性別、世帯構成、居住地域等によって基準が定められているため、算出すべき内容が、養育費を支払うべき親ごとのケースに当てはめやすいという利点があり、現在、家庭裁判所が算定する方式の主流になっています。ただし、生活保護世帯に合わせてあるため、このまま適用すると一般的な家庭と比べ、低い金額になる傾向があります。このため、実際には、算出された金額に上積みして決定されます。
労働科学研究所が昭和27年に独自の実態調査に基づいて、各人の消費単位により最低生活費の算定方式を考案したものです。この方式は、1952年の調査に基づいているため、時代に合ったものでなく、消費単位をこのまま用いることは疑問視されています。
圧倒的に分割払いが多いです。養育費は、定期的に支払われる方がよいと思いますが、相手が継続的に支払わない恐れがあり、財産があるときなどは、一時払いの方がよいでしょう。
養育費を定めた公正証書などがあれば、支払いが滞っても財産を差し押さえられます。2004年の民事執行法改正で、将来の差し押さえも可能(改正前は過去の不払い分のみ差し押さえが認められました)になり、相手が会社員であれば給与から天引きされ、会社から養育費を振込んでもらえます。ただし、強制執行をすると、会社員であれば会社に居づらくなり、意図的に会社をやめ、引越しを頻繁に行い、住所不定・無職ということで支払われなくなるケースもあります。
法的な定めはありませんが、子供の福祉の観点から、20歳まで養育費を支払うというのが一般的です。必ずしも子供が成人する18歳までということではなく、大学を卒業するまでなどさまざまです。
銀行や郵便局などに子供名義の口座をつくり、そこに毎月定めた期日に養育費を振り込んでもらうのが最良です。
離婚のときにきちんと養育費を決め、書類などに残した場合は、変更するのは困難ですが、特別な事情があるときは養育費の増減が認められることもあります。
これらの場合、支払う側に増額に応じられるだけの資力があることが条件です。
現実は、裁判所に減額を申し立てる例は少なく、事実上、減額送金をしているようです。
離婚時に養育費の具体的な取り決めをしておらず、請求しても支払ってもらえない場合は、できるだけ早く家庭裁判所に調停または審判を申し立てた方がよいと考えられます。その理由は、調停がまとまらなければ、裁判官により審判がなされることになりますが、審判では養育費の請求について、調停または審判の申し立てをした月からの分しか認められない場合が多いからです。つまり、家庭裁判所に調停または審判を申し立てるまでの養育費は認められない可能性があるということです。
養育費の金額を取り決めていなかった場合は、定期給付債権とされませんので、過去の養育費の請求ができます。他方で、養育費の金額を取り決めていた場合は、定期給付債権とされ、消滅時効の期間は5年となり、5年以上過去のものは、消滅時効が完成しているということになります。
例:夫が養育費を支払う。子供を引き取った元妻が再婚し、再婚相手と子供が養子縁組した場合。
民法第877条第1項(扶養義務者)は、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めています。法律上、親は子供を扶養する義務があります。つまり、離婚後に元妻が再婚しようが、子供が再婚相手の養子(特別養子縁組は除く)になろうが、自分の子供である以上、養育費を支払い続けなければならないということです。ただし、元妻の再婚により、元妻の家計が経済的に安定しているのであれば、養育費の減額請求の原因になります。
養育費の支払い義務を負っている親でも養育費の支払い能力が乏しい場合があります。このようなとき、その親の両親(子供からみると祖父母)には十分な資力があり、連帯保証人になる旨の承諾が得られれば、連帯保証人についての取り決めがなされることがあります。
連帯保証人をつけておくことで、万一、養育費の支払い義務を負っている親が失業やリストラにあった場合や死亡した場合にも、連帯保証人に請求することができます。ただし、連帯保証人が先に死亡したり、高齢になり年金暮らしで養育費の支払いが困難な場合も予測されます。このようなデメリットも考慮した上で連帯保証人ついて協議されるとよいでしょう。
養育費は、親が子供に対する生活保持義務に基づくものであり、連帯保証になじまないとする考え方もあります。子供の祖父母は、夫婦の離婚後であっても子供の直系親族であることにかわりはありませんが、民法877条に基づく生活扶助義務を負うことはあっても、当然に養育費の支払い義務は負うものではありません。