離婚の慰謝料

慰謝料とは

慰謝料は、夫婦の一方の不法行為による心身の痛み、苦痛を和らげ、回復するために支払われるもので、精神的苦痛に対する損害賠償金のことです。これは、離婚原因をつくった側(加害者)が精神的苦痛を受けた側(被害者)に対して支払うもので、慰謝料を請求できるのは、必ず妻側などという定めはありません。双方に責任があるときは、慰謝料はなしということもあります。

慰謝料の額

慰謝料の額は、不貞や暴力などの原因、婚姻期間、相手の資産や収入、生活能力など、さまざまな事情や損害の程度を考慮して決めることになります。およそ100万円~300万円の慰謝料で解決されている場合が多いようですが、個別の事情により異なります。

慰謝料請求権の消滅時効

慰謝料請求権の時効は、離婚が成立した日から3年以内になります。

第三者に対する慰謝料請求

不貞とその相手に対する慰謝料請求

夫婦の一方が不貞行為をし、それが原因で婚姻関係が破綻した場合、精神的苦痛を受けたとしてその愛人にも慰謝料請求ができるのでしょうか?

最高裁判例は、「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかに関わらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者が被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務がある」としています。

最近では、責められるべきは、貞操義務に違反した配偶者で、不貞行為の態様によっては第三者に責任を問えないという見解も出ています。慰謝料請求ができるか否かについての判断は、次のように夫婦関係の状態が一つの目安になります。

不貞の相手方に対して慰謝料請求ができる場合

この場合でも人前で愛人を罵倒したり、脅迫などをしたときは慰謝料を減額されたり、慰謝料請求そのものができなくなったりするばかりか、逆に訴えられることにもなりますので、くれぐれも注意しましょう。

夫婦の一方や愛人が素直に不貞行為を認めていれば問題はありませんが、そうでないときは、不貞行為を確認出来るもの、不貞行為が婚姻関係が破綻していない時点で行われたものについて、明らかになる証拠が必要となります。

不貞を働いた配偶者(有責配偶者)とその相手は共同不法行為者となり、その損害賠償債務は不真正連帯債務の関係になります。有責配偶者かその相手の一方が一定の金額を支払った場合には損害賠償債務が消滅し、他方への慰謝料請求は認められません。

不貞の相手方に対して慰謝料請求ができない場合

不貞の相手方に対して「未成年の子供の分も慰謝料請求をしたい!」という気持ちは分からなくはありませんが、直接的な関係はないとして認められません。

舅・姑に対する慰謝料請求

舅(しゅうと=夫または妻の父)に性行為を迫られた、暴力をふるわれた、あるいは姑(しゅうとめ=夫または妻の母)から虐待を受けたなど、これらが原因で離婚することになったときは、当事者に対して慰謝料を請求することができます。このときでも夫婦関係の状況や双方に責任がある場合は、慰謝料請求できない可能性があります。