内容証明郵便は最低3通が必要です。相手方に送られる1通は、内容文書と呼ばれ、証明の対象になる文書です。郵便局と差出人が保管する2通は謄本と呼ばれています。字数や行数の制限は、正確には謄本の作成にあたっての制限で、内容文書における制限ではありません。以下、内容文書と謄本に分けてルールを見ていきます。
文書2通を内容としたものは、内容証明とすることができません。ただし、1通の文書としての形式を備えていれば、内容が2通以上の文書であっても、内容証明の取り扱いを受けることができます。
内容文書以外の文書や図面、返信用封筒その他の物品は、同封できません。したがって、図面や写真なら容易に理解できるような場合でも、言葉でわかりやすく記載することが要求されます。このような添付資料等は、別に普通郵便で郵送するという方法があります。
為替証書、小切手、手形、その他の有価証券は、内容文書とすることができず、また添付、同封もできません。
縦書き、横書きの制約はありません。
縦書き | 1行20字以内、1枚26行以内 |
横書き | 1行13字以内、1枚40行以内、または1行26字以内、1枚20行以内 |
要するに、縦書き、横書きいずれの場合も総字数において520字以内でなければならないということです。ちなみに、謄本を作成する上で行数や字数を制限する理由は、料金計算上の必要からです。
下記の場合は、謄本の行数、字数に算入しません。
訂正、挿入または削除するときは、個所および字数を欄外または末尾余白に記載し、これに押印します。差出人が複数いるときは、全員の押印が必要です。
訂正または削除にかかる文字は、読み取ることができるように2本の線を引いて消します。
謄本の枚数が2枚以上になったときは、原稿の一部に差替えがなされないようにするため、各原稿の綴り目に差出人の押印をすることが要求されます。この押印を契印と言います。
実務上、普通の内容証明郵便の場合、差出人及び受取人の住所・氏名を記載した同文の文書3通を一度に作成しますので、内容文書を書いてから、謄本2通を書くということはありません。そして、この3通を作成するにあたって、上記に説明した内容文書作成のルールと謄本作成のルールの両方を守ります。このようにして作成された3通は、どれを内容文書にしてもよく、またどれを謄本にしてもよいということになります。
ワープロで作成します。プリンターまたはコピー機で複写し、3通にします。これ以外にも次の方法があります。
用紙は市販されている赤いマス目の内容証明用原稿用紙を使い、カーボン紙をはさんで、手書きまたはタイプで3通作成します。もちろん、1通だけ作成して、あとの2通はコピー機で複写するという方法でもOKです。
白紙(B4判)を2つ折りにし、片面20字13行とし、カーボン紙をはさんで、手書きまたはタイプで3通作成します。もちろん、1通だけ作成して、あとの2通はコピー機で複写するという方法でもOKです。
差出人には正当な請求権が存在し、これに基づく行使であることを伝えて、受取人がその義務を履行することを納得させるために、次のような項目を記載します。
標題(タイトル) | 内容証明郵便は、標題のついたものがほとんどですが、無いものもあります。標題があると文書全体が引き締まった感じがしますので、通知書、通告書、請求書、催告書、警告書など簡潔に書くことをお勧めします。 |
受取人側の義務の説明 | 受取人側は、義務を負っていることを知らない、あるいは無いと思っていることもありますので説明をします。 |
受取人側の義務不履行の具体的な説明 | 受取人側に義務があるにも関わらず、遂行されていないことを説明します。 |
差出人側の権利行使の内容 何に基づく権利か どのような権利か |
差出人側には正当な請求権が存在し、請求権の正当な行使であることを記載します。 |
差出人側の権利行使の前に要請されている義務が遂行されたことを通知 | 差出人側が本来有している権利を行使するため、遂行すべき義務が課せられているような場合には、内容証明郵便の送付により義務が遂行されたことを明記します。 |
受取人側に義務履行の要求をする内容 | 「何を」、「誰に」、「何時までに」、「どうする」、「どうやって」等を忘れずに記載します。 |
年月日 | 本文の後に年月日を書きます。通信日付印が押されて差出日も証明されるので、年月日は必ずしも必要ではありませんが、書いておくことをおすすめします。 |
差出人及び受取人の住所・氏名の記載 | 「通知人 ○○」や「被通告人 ○○」などの肩書きは、書くか書かないかは自由です。 |
差出人の捺印 | 法律上、捺印の必要はありませんが、差出人の氏名の下に捺印をするのが通例です。捺印する印は、実印である必要はなく、また契印や訂正印の印と同じである必要もありません。 |
内容証明郵便は、大きく分けて普通の内容証明郵便と同文内容証明郵便の2つがありますが、難しく考える必要はありません。要するに、1人の受取人に対して送るのか、あるいは2人以上の受取人に対して同文のものを送るのかの違いです。
1人の受取人に対して、内容証明郵便を送るときは、これを利用します。この場合、差出人及び受取人の住所・氏名をきちんと記載するのが通例で、一般に内容証明郵便といえばこれを指します。
同文内容証明郵便には、2つの種類があります。
2人以上の受取人に対して、同文の内容証明郵便を送るときは、これを利用します。この場合、受取人の住所・氏名を連名で全員記載するのが通例です。例えば、連帯債務者や連帯保証人などすべての債務者に同じ請求をする場合などに適しています。
2人以上の受取人に対して、同文の内容証明郵便を送るときに、受取人の住所・氏名を連名で全員記載することに不都合があるとき、またそうしたくないときに利用します。例えば、相互に関連性のない多数の相手方と同種の契約を締結している場合に、複数の相手方に対し同内容の文書を個別に発送する必要がある場合などに適しています。(この場合は、内容文書と謄本を別々に作成します。)
普通の内容証明郵便、同文内容証明郵便のいずれの内容文書にも、差出人及び受取人の住所・氏名の全部または一部が記載されていない場合があります(通常は記載することが多いので、以下の問題が生じることはありません)。この場合でも、その内容証明郵便が誰から誰に宛てて出されたのかを、明らかにする必要があります。そこで、差出人は、謄本の末尾余白等に差出人及び受取人の住所・氏名を記載し、引受時に郵便局側でその個所に付記、添付、または連記と記載してこれを明示することにしています。
謄本の末尾余白に、差出人や受取人の住所・氏名を記載したことを意味します。(普通の内容証明郵便及び完全同文内容証明郵便の謄本に記載)
謄本の末尾に余白がなくて付記できない場合、別の紙に差出人や受取人の住所・氏名を記載して、謄本に添えたことを意味します。(普通の内容証明郵便及び完全同文内容証明郵便の謄本に記載)
内容文書のそれぞれ異なる受取人の住所・氏名を、謄本に全部併記したことを意味します。(不完全同文内容証明郵便の謄本に記載)