傷害事故の慰謝料は、精神的または肉体的に被った苦痛の大きさを考慮して算定します。受傷の慰謝料は、受傷の部位、程度、入通院期間の長短に従って、ある程度、定額化して慰謝料額を算定します。
入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | |
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通院 | 25.2 | 50.4 | 75.6 | 95.8 | 113.4 | 128.5 | 141.1 | 152.5 | 162.5 | |
1月 | 12.6 | 37.8 | 63.0 | 85.7 | 104.6 | 121.0 | 134.8 | 147.4 | 157.5 | 167.5 |
2月 | 25.2 | 50.4 | 73.1 | 94.5 | 112.2 | 127.3 | 141.1 | 152.4 | 162.5 | 171.3 |
3月 | 37.8 | 60.5 | 81.9 | 102.1 | 118.5 | 133.6 | 146.1 | 157.4 | 166.3 | 173.8 |
4月 | 47.9 | 69.3 | 89.5 | 108.4 | 124.8 | 138.6 | 151.1 | 161.2 | 168.8 | 176.4 |
5月 | 56.7 | 76.9 | 95.8 | 114.7 | 129.8 | 143.6 | 154.9 | 163.7 | 171.4 | 178.9 |
6月 | 64.3 | 83.2 | 102.1 | 119.7 | 134.8 | 147.4 | 157.4 | 166.3 | 173.9 | 181.4 |
7月 | 70.6 | 89.5 | 107.1 | 124.7 | 138.6 | 149.9 | 160.0 | 168.8 | 176.4 | 183.9 |
8月 | 76.9 | 94.5 | 112.1 | 128.5 | 141.1 | 152.5 | 162.5 | 171.3 | 178.9 | 186.4 |
9月 | 81.9 | 99.5 | 115.9 | 131.0 | 143.7 | 155.0 | 165.0 | 173.8 | 181.4 | 188.9 |
10月 | 86.9 | 103.3 | 118.4 | 133.6 | 146.2 | 157.5 | 167.5 | 176.3 | 183.9 | 191.4 |
11月 | 90.7 | 105.8 | 121.0 | 136.1 | 148.7 | 160.0 | 170.0 | 178.8 | 186.4 | 193.9 |
12月 | 93.2 | 108.4 | 123.5 | 138.6 | 151.2 | 162.5 | 172.5 | 181.3 | 188.9 | |
13月 | 95.8 | 110.9 | 126.0 | 141.1 | 153.7 | 165.0 | 175.0 | 183.8 | ||
14月 | 98.3 | 113.4 | 128.5 | 143.6 | 156.2 | 167.5 | 177.5 | |||
15月 | 100.8 | 115.9 | 131.0 | 146.1 | 158.7 | 170.0 |
適用上の注意
軽傷の場合 | 支払基準表の金額 ~10%増程度 |
通常の場合 | 支払基準表の金額の10%~20%増程度 |
重傷の場合 | 支払基準表の金額の25%~70%増程度 |
軽傷 | 打撲、挫傷、擦過傷、捻挫(頚椎・腰椎捻挫)など、下記「通常」・「重傷」以外のもの。 |
通常 | 骨折(前腕骨折等)、骨折と同程度の傷害(膝関節脱臼等)、入院事案または後遺障害の残存するもののいずれかに該当するもの。 |
重傷 | 頭蓋骨骨折、脳挫傷、頭蓋内出血(硬膜外血腫、硬膜下血腫等)、顔面部(眼)の深部損傷(視神経損傷、眼球破裂等)、顔面部(耳、鼻)の髄液漏、頚・胸・腰椎脱臼・骨折、頚髄損傷、上腕神経叢完全損傷(完全麻痺)、臓器損傷・破裂、上肢手関節以上切断、下肢足関節以上切断、熱傷II~III(体表面の30%以上)等 |
通院回数が週2回~3回程度以上、すなわち月8回~10回程度以上の場合は、通院1ヵ月とします。通院が長期に渡り、月2回~3回しか通院しないというように、通院日数が少ない場合は、通院実日数を3倍ないし3.5倍して得た数値を通院期間として慰謝料を算定します。
入院期間は、原則として病院に入院している日数ですが、入院の待機期間およびギプスを装着して安静を要する自宅療養期間も加算することができます。
下記部位に骨折、変形等があり、ギプスを装着した被害者は、たとえ入通院の実治療がなくても装着期間日数を実治療日数として取扱います。ただし、受傷の程度が骨折、変形ではなく、脱臼・捻挫で日常生活に支障がないときは、認められない可能性があります。
治療費、入院費などは、治療のために必要性があり、かつ相当性があると認められるものは、原則として実費全額が損害と認められます。具体的には、診察費、検査費、投薬費、手術費、処置費、診断書料などが請求できます。ただし、被害者が勤務先や自分が加入する生命・損害保険会社に提出する診断書については、個人の事情と利益のためなので、請求できません。
初診は必ず柔整師等は避け、病院に行くことが重要です。初診ではX-P、CT、MRIを撮影し、受傷の部位・程度を確認します。この能力は病院にしかありません。また、柔整師は医師ではありませんから、後日に後遺障害となったときは、医師が書く後遺障害診断書が必要になります。くどいようですが、灸・ハリ・マッサージ・あんま、指圧師などの医業類似行為は、医師の治療を一度でも受けた後でないと損害保険会社に請求できません。
「落ち着いた環境で治療を受けたい」と患者側の希望で個室などに入った場合に限り、医療機関が保険外で請求できる特別料金です。価格は医療機関側が自由に設定します。特別室料(差額ベット料)は、相部屋に空きのない場合以外は支払われません。
医療機関側が患者に請求できないケース
特別料金なので、請求するには患者側が望んだことを証明する同意書が必要です。医療機関は十分な情報を提供し、患者の意思に反して請求することがないよう努めなければならないとされています。
入院付添は、病院が完全看護のとき(厚生労働省の基準看護を取得している総合病院など)は、原則として付添人を付すことが認められず、その費用は請求できません。また、自分で立ってトイレに行ける程度の傷害の場合も認められません。ただし、医師の指示のある場合や、受傷の部位、程度または被害者の年齢などからみて付添の必要性があれば損害と認められます。
通院付添は、被害者が幼児、老人である場合、または受傷の部位、程度により他人の手助けがなければ通院できない場合に認められます。被害者が幼児である場合には、職業付添人のほかに、母親の付添を認めることがあります。原則として、付添人の数は被害者1人に対して付添人1人です。
受傷の程度または被害者が幼児等の場合には、増額することがあります。母親が勤務を休んで付添った場合に、母親の休業損害に相当する額を、付添費として認めた判例があります(4歳・女の乳歯喪失の治療のため通院に付き添い欠勤した母の付添費につき、1日1万円(休業損害請求額1日あたり1万608円)、6日分を認めた例 東京地判平8.12.10)。
自宅における近親者の場合は、受傷の部位、程度により、付添の必要性があれば、損害と認められます。これらは、職業付添費額の範囲内で請求することになります。
入院中に支出した入院雑費は、損害と認められます。入院雑費には通常、次のようなものがあります。
診断書等に入院の事実が記載されていれば1日当たり1,100円を定額として自動的に認定されます。特別な事情がある場合、1,700円を1日当たりの入院雑費と認めた判例があります(29歳・女・コンピューター会社情報開発部門副主任の事故日から死亡日までの33日間の入院につき、日額1,700円を認めた例 千葉地判平10.12.25)。入院が長期となったときは、1日の入院雑費の額をやや低めに計算して請求します。
入院雑費として請求することができないものとしては、見舞客に対する接待費(寿司、そばなど)、お見舞の返礼のために使った費用(快気祝)があげられます。また、退院後も使用できる寝具、炊事用具などの購入費も請求できません。
医師、看護婦等に対する謝礼は、社会的に相当な範囲のものであれば、入院雑費とは別に認められます。受傷の部位、程度または入院の期間によっても異なりますが、請求できる額は15万円~50万円程度です。
被害者が入院、転院、退院、あるいは通院のために要する交通費は、現実に支出した実費が損害と認められます。交通費は原則として電車、バスなどの公共交通機関の運賃とされ、通院交通費明細書に書き込んで提出すれば認められ、領収書は必要ありません。
タクシー代が請求できるのは、受傷の部位、程度によって電車やバスが使えない場合、または交通の便が悪くてタクシーを使わざるを得ない場合です。
自動車で通院する必要性が認められる場合には、ガソリン代、高速道路代、駐車場料金などの実費相当分を請求できます。
原則として、家族の交通費は近親者の付添費あるいは入院雑費に含まれますので、認められませんが、遠隔地の場合は、見舞、看護が必要で相当なときに別途認められます。
被害の程度、子供の年齢、家庭の状況に照らして、必要性があれば相当額が認められます。具体的には、進級遅れの場合の授業料、補習費および家庭教師の費用とともに無駄となった支払済みの教育費用などが認められます。
通学付添費は、受傷の部位、程度によって損害として請求できることがあります。自宅からの通学が困難になったため、学校の近くに借りたマンションの賃料を損害として認めた判例もあります。
休業損害は、怪我により働くことができず、現実に得ることのできなかった収入の減少額であり、損害と認められます。
交通事故による受傷のため、退職せざるを得なかったり、解雇された場合には、交通事故と退職または解雇との間に相当な因果関係が認められれば休業損害を請求することができます。治療のため、再就職することが困難であれば、治癒までの間の休業損害を請求することができ、治癒後については、再就職するのに必要な期間に限り、休業損害を請求することができます。
休業損害は、原則として年収額を365日で割って収入日額を出して、これに土曜日、日曜日および祭日等の日数を控除しない休業総日数を乗じることによって休業損害を計算します。日雇労働者または非常傭日給者については、原則として事故前3ヵ月間における合計収入額を90日で割って収入日額を算出します。ただし、交通事故時における契約期間、季節的要因等を考慮します。
休業損害=収入日額×休業日数
休業損害(傷害)と逸失利益(後遺障害・死亡)の算定に必要です。
原則として、事故前の収入を基礎として、受傷による治療のために休業せざるを得なかった全期間につき休業損害が認められます。給与所得者の収入額(所得税額を控除しない所得額)は、収入証明書または源泉徴収票を基にして算出します。収入証明書を発行してもらえない等の何らかの事由により、収入を証明する資料を集めることができないときは、賃金センサスの第1巻第1表の男女労働者別平均給与額または年齢別平均給与額によって算定することができます。
会社員で有給休暇を使った場合、現実に収入の減少がなくても休業損害は請求できます。
賞与の減額や昇給の遅延による減収も、勤務先から賞与減額証明書等をもらって、保険会社に提出すれば損害として請求できます。
会社役員は、役員報酬のうちの労働報酬の分を事業の規模、形態などを考慮して、休業損害を請求することができますが、損害保険会社はまず認めようとはしません。
個人事業主や農業従事者等で家族従業員を使用している場合には、事故前1年間の売上額から必要経費を控除した純益について、家族の寄与分を考慮した上で、被害者の寄与分を定め、それに応じた被害者本人の収入を算定します。寄与分は、誰々は何パーセントという決まりはなく、その事業者ごとに異なるので、その事業の規模、形態および関与者の状況を考慮して、その具体的な割合を個別的に決定します。
売上額-必要経費=純益 純益×被害者の寄与率=被害者本人の収入
収入の証明としては、所得税申告書等によりますが、必ずしもこれに限ることなく、帳簿や伝票などでもOKです。
代替労働力を利用して収入を維持したときは、それに要した必要かつ妥当な費用が休業損害として認められます。
事業継続のために支出しなければならない店舗賃料、従業員給与などの固定費は、相当性がある限り損害と認められます(事業所の地代、電気・ガス・電話の基本料金、車その他の損害保険料等もOK)。
会社の社長が交通事故にあったとしても、企業損害は間接損害なので、原則は認められません。しかし、最高裁判例は、個人企業などで被害者がいないと商売にならないような場合は、交通事故と企業の利益損失の相当な因果関係が証明できれば個人企業の利益損失分を請求できるとしています。現実的には、企業損害の賠償性が認められるとしても、損害額の立証が非常に困難なので、保険会社は企業損害を認めようとはしません。
家事従事者とは、性別・年齢を問わず、現に主婦的労務に従事する者をいいます。現実に収入がなくても休業損害が認められます。主婦の休業損害は、原則として賃金センサスの第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均給与額または年齢別平均給与額を用います。
パート収入等がある兼業主婦の場合には、現実収入額が統計の平均給与額より高い場合は、現実収入額を収入とします。逆に、パート収入等の現実収入額が統計による平均給与額より低い場合は、平均給与額を収入とします。
代替労働力を利用して収入を維持したときは、それに要した必要かつ妥当な費用額が休業損害として認められます。
治療が長期にわたり、学校の卒業ないし就職の時期が遅延した場合は、就職すれば得られたはずの給与額が損害として認められます。アルバイト学生の単発的なアルバイトでは休業損害は認められませんが、長期的なアルバイトをしているような場合は休業損害が認められます。
失業中の者は、働いておらず現実収入がないので、原則として休業補償はありません。失業中であっても、すでに就職が内定している人、また就労する蓋然性の高い失業者は、決定している給与額または賃金センサス等の統計の平均給与額により算定した休業損害を請求することができます。
金利、地代・家賃収入あるいは恩給・年金、生活保護受給などで生計を営んでいる人は、休業損害を請求できません。
休業損害を請求できる期間は、治療のために現実に働けなかった休業実日数です。