交通事故の被害者がすべきこと

交通事故に遭ったらどうするか?

交通事故に遭った場合、怪我の程度にもよりますが、示談交渉をスムーズに行うためにも被害者自身でやれることは極力やっておきます。被害者が病院に担ぎ込まれたときは、その家族などが警察から交通事故の状況を聞いておくことが肝要です。

加害者の確認

交通事故の被害者となった場合、まずは損害賠償を請求する加害者を特定しなければなりません。加害者としての責任は、場合によっては運転者だけでなく、自動車の保有者や仕事中の交通事故の場合には、運転者の雇主にもありますので、これらを確認します。

上記の他に電話番号、任意保険会社名等も聞いておきます。加害者が加入している自賠責保険会社名や証券番号が分からないときは、自動車安全運転センター発行の交通事故証明書を入手すれば、自賠責保険会社に対し被害者請求ができます。交通事故証明書は、最寄りの交番や警察署で交通事故証明書申込用紙を貰い、所定の項目に記入し、郵便局から540円(振込手数料が別途必要)を振り込むと各都道府県の自動車安全運転センターから郵送されてきます。

事故現場の確認

被害者にも過失がある場合、示談交渉で不利にならないよう、交通事故の現場を確認し、見取図を作成したり、写真(事故車・事故現場)を撮っておくことも大切です。これは事故後、なるべく早くやらないと記憶が薄れたり、市街地の開発によって、現場の様子が一変してしまうこともあります。

目撃者へ要請

交通事故の目撃者がいれば、その人の証言をメモし、住所、氏名、連絡先を聞いて必要なときは、証人になってくれるよう頼んでおきましょう。

警察への届出

加害者は、道交法によって警察へ交通事故の報告義務があります。しかし、加害者が重傷で報告できない場合、または敢えて報告しない場合は、被害者が事故内容等を警察に報告します。

軽微な交通事故や、加害者が運転免許停止処分になると困る等の場合、往々にして加害者から「お金はきちんと支払うので、警察には連絡しないでほしい」と頼まれることがあります。しかし、被害者としては、被害が軽い場合でもこのような申入れには応じるべきではなく、必ず警察に報告します。警察への報告がされていないと、警察官が事故現場を調査し作成する実況見分調書がなく、交通事故証明書も発行されませんので、損害賠償金の請求も困難になります。

病院で受診

被害者自身の判断で、大丈夫と思っていても骨が折れていたなんてことはよくあります。意外に重傷だった、そんなことのないように、必ず医師の診察を受けます。初診は必ず接骨院(整骨院)等は避け、病院に行くことが重要です。初診ではX-P、CT、MRIを撮影し、受傷の部位・程度を確認します。この能力は病院にしかありません。

略語の解説
  • X-P(X ray Photograph)=レントゲン撮影による検査のことです。
  • CT(Computed Tomography)=コンピュータによる断層写真のことです。
  • MRI(Magnetic Resonance Imaging)=磁気共鳴画像のことです。

接骨院(整骨院)等のみで施術を受け、後日、後遺障害となったときは、医師が書く後遺障害診断書が必要になります。しかしながら、事故後、数ヶ月経過してから医師の診察を受けるということは、交通事故との相当因果関係が問題になり、後遺障害非該当となるリスクが高まりますので注意が必要です。また、灸・ハリ・マッサージ・あんま、指圧師などの医業類似行為は、医師の治療を一度でも受けた後でないと損害保険会社に請求できません。

人身事故になるか物損事故になるかは、被害者が自分で病院の診断書を警察署に持参することで決まります。

証拠を保存

示談交渉や裁判で証拠となる領収証・診断書・写真などは大切に保存しておく必要があります。交通事故に遭うといろいろな人と会ったり、さまざまな事がおきますが、記憶に頼ると後々「言った、言わない」の争いになってしまうので、任意保険会社の担当者と交渉したり、警察に交通事故の状況を説明したり、加害者が見舞いに来たりといったことや、あるいは手術・検査の内容、日時、実際に通院した日数等は一覧にしておくと今後の見通しを立てるのにも役立ちます。このように、被害者本人でスケジュール表を作成することをおすすめします。

交通事故の専門家に相談

後遺障害が残ったにも関わらず、交通事故との相当因果関係等が問題になり、後遺障害非該当とされた交通事故被害者の方も多くみえます。

交通事故との相当因果関係が問題になる事例

症状及び治療の一貫性が問題になる事例

これらは、事故後、早期に交通事故の専門家に相談していれば、後遺障害非該当を回避できた可能性があります。

被害者の他に誰が損害賠償請求できるか

被害者は、自分の受けた経済的損害の賠償と精神的損害の賠償(慰謝料)とを自ら請求するのが原則ですが、それができない場合もあります。

被害者が死亡した場合

損害賠償請求権は、被害者の遺族に相続され、相続人が請求をすることになります。また、被害者が死亡した場合、配偶者、子、父母は、相続による損害賠償請求のほかに自分自身の慰謝料も請求することができます。死亡事故で被害者請求する場合、相続人、慰謝料請求権者が複数いるときは、1人を代表請求者として、その人に委任します。

自賠責保険では、内縁の妻にも被害者請求を認めていますが、死亡した被害者に相続人がいるときはトラブルになることも多く、さまざまな問題があるのも事実です。

被害者に大きな後遺障害が残った場合

被害者が死亡しなくても大きな後遺障害が残って被害者自身で損害賠償請求ができないときは、一定の近親者(父母・配偶者および子)が法定代理人として損害賠償請求をすることができます。最終的に示談交渉を弁護士に委任するとしても、被害者本人に代わって法定代理人が弁護士に委任するということになります。

被害者が未成年者の場合

被害者が未成年者のときは、本人には法的手続きをとる行為能力がありませんので、親権者(親)が法定代理人として請求することになります。被害者が精神上の障害により、事理弁識能力(物事を主体的に判断できる能力)を欠く場合も同様に後見人が請求します。被後見人は、未成年者と同様に、単独で法律行為ができません。被後見人が勝手にやった法律行為は取消すことができます。