交通事故の過失割合と過失相殺

過失割合

交通事故の多くは、加害者の過失だけでなく、被害者の過失も伴って発生します。通常、被害者に過失が問われないのは、加害者の追突・信号無視・センターラインオーバーぐらいです。

被害者にも過失がある場合、損害を一方的に加害者だけに負担させるのは損害の公平な分担にそぐわないので、このようなときは、過失割合に従って損害賠償額も過失相殺(かしつそうさい)されます。この際、問題となるのが、過失相殺率の認定です。

過失割合は誰が決める

過失割合を警察が決めていると誤解されている方もいますが、過失割合は損害保険会社が独自に調査して決めています。損害保険会社の提示する過失割合に納得がいかないときは、遠慮せずに「なぜ、その過失割合になるのですか?」と説明を求めてください。

支払についての情報提供

自動車損害賠償保障法の一部を改正する法律が成立し、平成14年4月1日から損害保険会社は支払についての情報を書面により請求者に提供することとなりました。正当な理由なくこれらを怠ると100万円以下の過料に処せられます。

請求者には、以下の情報が提供されます。

請求したとき 支払基準・支払手続きの概要、紛争処理制度の概要
支払われるとき 支払額、後遺障害等級と判断理由、減額割合と判断理由、異議申立ての手続き
支払われないとき 支払われない理由

また、上記に加えて必要な追加情報も損害保険会社に請求することができます。

物損事故と人身事故の過失割合は同じ?

一般的には、物損事故の示談は早くなされ、その時に採用した過失割合を人身事故の示談時にも用いますが、新たな事実が出てきて変更されることはあり得ます。

過失割合を考えるときに必要な情報とは

交通事故状況を正確に把握します。

道路の一般的状況

加害車両側・被害車両側の幅員(道幅)、歩車道の区別、路面の状況(乾燥・湿潤・凍結・積雪等)、路線(直線・曲り角・カーブ等)、勾配(上り・下り・ない)、見通し状況、信号機、道路標識の有無、交通量、照明等

交通事故と直接関連のある状況

衝突地点、スリップ痕・擦過痕、車両の破損状況、速度等

過失相殺

交通事故の状況は千差万別なので、どのような場合にどれくらいの過失相殺をするか、判断するのは極めて難しい問題です。

別冊判例タイムズ 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準

別冊判例タイムズ民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準

交通事故をある程度、分類して類型化する必要性があることから、別冊判例タイムズ 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準といった本があります。この本は、過去に起こった同じようなケースの交通事故の裁判例を参考にまとめていますが、損害保険会社は、ほぼ絶対的な基準として使用しているようです。

交通事故発生時の様々な状況・事情に対応し、過失割合を修正できるように修正要素が設定されていますが、それでも、交通事故形態は千差万別であり、場合によっては個別の事情によって過失割合が変わることもありますので、一応の目安と考えてください。

過失相殺の具体例

次のような交通事故が発生した場合、過失割合によって損害賠償額は、Aさんの損害50万円につき、BさんはAさんに10万円(50万円×0.2)を支払うことになり、Bさんの損害100万円につき、AさんはBさんに80万円(100万円×0.8)を支払うことになります。

結局、お互いの支払額を相殺するとAさんがBさんに70万円支払うことになります。

損害 過失割合
Aさん 50万円 80%
Bさん 100万円 20%

具体例の場合、一見すると、Bさんは損害100万円のうち、相手に80%の過失があるので、80万円がもらえると思いがちですが、そうではなく、Aさんの損害のうち、自分の過失が20%あることを忘れてはいけません。つまり、自分の損害ばかり考えていてはダメだということです。

被害者の方に知っておいていただきたいのは、損害保険会社との示談交渉において、過失割合は流動的なもので、法的に確定したわけでもなく、また拘束力もないということです。最終的には裁判所が判断して決定すべきことです。

過失相殺は、被害者にも落ち度があると慰謝料だけでなく、治療費および休業損害などの全損害額からその過失割合に従って差し引くのが一般的です。